第643章 命を賭けて戦うしかない

外は、雪が舞っていた。

出雲絹代は居間の入り口に立ち、長谷川深が出て行くのを見送ってから振り返ると、深刻な表情をした水野春智の姿が目に入った。彼女は不思議そうに近寄って尋ねた。「あなた、長谷川のことをどう思う?」

水野春智は彼女の声を聞いて我に返り、外を一瞥してから深いため息をつき、一言一言はっきりと言った。「あれは長谷川深だ!」

出雲絹代は困惑した表情で彼を見つめ、続きを待った。

水野春智は言葉を選ぶように、どう説明すべきか考えながら、しばらくしてから言った。「妻よ、彼が誰か知っているか?」

出雲絹代は彼と結婚して長年経つが、会社の経営が上手くいかず、資金繰りが破綻し、倒産寸前の時でさえ見せなかったような、こんなに深刻で心配そうな表情を初めて見た。彼の手を握りながら尋ねた。「彼は誰なの?」