第657章 精神に異常が出た

外は、また雪がちらちらと降り始めた。

藤田清義は手を伸ばし、掌に降り積もる雪を見つめ、それが水に変わるのを見た。その深い眼差しの奥には、消えることのない苦い思いが宿っていた。しばらくして、ようやく口を開いた。「玄次、もう家に帰るべきだ」

今は、少しの隙も見せてはいけない。犯人に自分の考えを悟られてはならない。いつも通りに振る舞わなければ。彼がここに来たのは、玄次を連れ戻すためであって、彼女に会うためではないのだから。

「分かりました」藤田清明は素直に答え、抵抗も反論もしなかった。実は心の中では、藤田清義が水野日幸に難しい顔をするのではないかと心配で、そっと彼の表情を窺った。今日の彼は何かがおかしい気がした。

「玄次、もし今、妹に会えたら、何を言うんだ?」藤田清義はため息をつきながら、突然彼に尋ねた。

「分かりません」藤田清明は即座に答えたが、その目には明らかな悲しみが浮かび、声も沈んで、少し籠もった。「何を言っても良いです。ただ、彼女が現れてくれさえすれば。大きな雪だるまを作ってあげられるのに」

藤田清義は言葉を返さず、彼を一瞥して話題を変えた。「今からここを離れるが、彼女に一言言っていくか?」

藤田清明は、この言葉に一瞬反応できず、思わず一歩後ずさりした。彼の目を探るように、警戒しながら見つめた。「兄さん、熱でもあるんですか?頭がおかしくなったんですか?」

おかしい。兄さんがこんな風に話しかけてくることなんて今までなかった。彼の意見を聞くなんて、夢にも思わなかったことだ。突然性格が変わったのか?

藤田清義の目が突然冷たく、危険な色を帯びた。乱暴に彼を引っ張って前に進み始めた。「行きたくないなら、いい」

「行きたいです、行きたい」藤田清明はあの悪戯っ子がどうしているか、兄さんに虐められていないか見に行きたかったのだが、チャンスを逃してしまえば後悔する暇もなく、そのまま引きずられていった。

車の中に蹴り込まれるまで、藤田清明は憤慨した表情で彼を睨みつけ、不服そうに言った。「父さんと母さんが言ってたじゃないですか、こんなことするなって。待ってろよ、絶対言いつけてやる」

そう言って、携帯を取り出して電話をかけようとした。