水野日幸は手を止め、そして尋ねた。「彼は何か見つけたの?」
長谷川深は首を振り、声に冷たさを帯びて言った。「今のところ大きな進展はない。我々は情報を交換した」
背後にいる人物は、彼の大切な少女を失踪させ、瑾智先生を陥れた策略を練った人物だけあって、その手口は綺麗に痕跡を残さない。そうでなければ、これほどの年月が経っているのに、藤田清義がどれほど無能でも、何かしらの手がかりを見つけているはずだ。
しかし、彼の最近の調査による推測では、背後の犯人は冷酷無比で手段を選ばない。彼の大切な少女の突然の出現は、おそらく犯人の予想外だったのだろう。
当初、犯人は彼女を殺そうとしたはずだが、何らかの予期せぬ出来事で失敗し、彼女が生き延びたからこそ、先日彼女を狙った事件が起きたのだろう。
背後の犯人は、藤田清義よりもそれほど早くに彼女の身元を知っていたわけではないはずだ。だからこそ、藤田清義が彼女を見つける前に急いで手を下したのだ。証拠を残さないためだった。
水野日幸の目は一層深い色を帯び、何も言わなかった。兄と藤田清義でさえ突き止められない人物だ。どれほど深く潜んでいるのか。彼女や瑾智叔父を狙える立場にいるということは、間違いなく藤田家の側近だろう。
長谷川深は少女の真剣な表情を見て、彼女が何かを考えていることを悟った。「実は、この人物について、君も推測がついているはずだ。君と瑾智先生に近づける人間は、必ず藤田家と親しい関係にある人物だ」
藤田家はこれほど大きな家族で、多くの人々がいる。直系は少ないが、権力を奪おうとする邪心を持った傍系の者たちは数知れず、誰が善人で誰が悪人なのか分からない。
「はい」水野日幸は頷いた。それは疑う余地もない。
彼女と兄が考えつくことなら、藤田清義も必ず考えているはずだ。
その人物は必ず見つけ出さなければならない。今見つけられないなら、将来さらに厄介になるだろう。あまりにも深く潜んでいる。
二人が話し合っている最中、撮影現場を映すパソコンの画面が突然混乱し、女性の悲鳴が響いた。
水野日幸が目を向けると、曽我時助の顔が鍋底のように黒く、殺気立っており、異様な形相をしているのが見えた。曽我若菜が何を言ったのか分からないが、彼は彼女の側に行き、髪を掴んで引きずっていった。