大物の水野日幸は、無奈気な表情で石田文乃の泣き声を聞き終わってから、やっと口を開いた。「今日、年越しステージの収録があるんじゃなかった?このまま泣き続けたら、収録できるの?」
彼女は石田文乃が泣くのを初めて聞いた。しかも自分のために泣いているのだ。言葉も出ないほど泣いていて、心が感動した。
「もう泣かない。私たちはトリで出演だから、まだ何時間もあるし、その時には腫れも引いているはず」石田文乃は涙を拭いながら、まだすすり泣きをしていた。先ほどのことを思い出して恥ずかしくなり、咳払いをして「じゃあ切るね。撮影が終わったら家に帰って会いに行くから。今は藤田家には行かないよね」
「行かないよ。家にいるから」水野日幸は言い終わると、さらに一言付け加えた。「お兄さんと一緒に帰るの?」