第91章 私はあなたの目に何なの?(7)

来栖季雄はまだ口を開かなかったが、自分の身にかけられた薄い毛布を手に取り、優しく握りしめた。いつもの冷たい表情が少し和らぎ、しばらくしてから鈴木和香に小さく「うん」と返事をした。そして机の上の台本を取り、和香に差し出した。「あなたの台本です」

鈴木和香はこっそりと目を上げて来栖季雄を見た。男性の表情は穏やかで、先ほどの彼女が許可なく寝室に入って窓を開けたことなど、まったく気にしていない様子だった。和香は密かにほっとため息をつき、台本を受け取ろうと手を伸ばした。しかし、彼女の指が台本に触れた瞬間、季雄が突然「ありがとう」と言った。

鈴木和香は少し驚いて顔を上げ、来栖季雄を見つめた。

結婚前の五年間、二人にはほとんど接点がなく、その前の半年以上は、彼は彼女に対して冷淡で不愉快そうだった。結婚後も、彼女が話しかけても無視されるか、冷たい言葉で当たられるかのどちらかで、細かく数えると、もう六年近く、普通に会話を交わすことすらなかった。