第99章 愛してはいけない深い愛(5)

鈴木和香は一体あなたにとって何なの?

その言葉に来栖季雄の足取りが一瞬止まった。しかし、それはほんの一瞬のことで、すぐに軽く笑って「頭がおかしい」と一言投げ捨てると、足早に松本雫を置き去りにして、彼女の誕生日パーティー会場から立ち去った。

頭がおかしい?

松本雫は口を尖らせ、「ふん」と一声。来栖大スターは彼女のことを頭がおかしいと言ったのか、それとも和香様のことを頭がおかしいと言ったのか?

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来栖季雄が松本雫の誕生日パーティーを出た時には、外は既に大雨が降り出していた。

アシスタントは用事があって先に街に戻っており、来栖季雄は車のドアを開け、運転席に座り、窓の外の土砂降りを見つめながら、しばらく物思いに耽っていた。そして車を発進させ、ゆっくりと道路に出た。

車内は静かで、外の雨音だけが聞こえていた。その音は、ぽつぽつと来栖季雄の左胸の最も柔らかい部分を打ち付け、彼の心臓を窒息させそうになった。ついにカーステレオのスイッチを入れた。