第132章 軽率な発言はやめて(6)

鈴木夏美は食事を楽しんでいるようで、最後に箸を置いた時、「この店の料理、なかなか美味しいわね」とつぶやいた。

そう言いながら、箸を置いた鈴木和香の方を向いて、「和香、どう?いい感じでしょう?」と尋ねた。

鈴木和香は軽く頷いた。

鈴木夏美は来栖季雄を見て、目を細めながら笑顔で言った。「この店は知ってるの。季雄が連れてきてくれたところよ」

鈴木和香は自分の手のひらを強く握りしめ、無理やり笑顔を作った。

鈴木和香の向かいに座っていた来栖季雄は、鈴木夏美の言葉を聞いて、思わず目を上げて鈴木和香を見た。女性の表情は普段通り穏やかで、まるで鈴木夏美が彼と一緒にここで食事をしたという話が、自分とは全く関係ないかのようだった。

来栖季雄の目に一瞬の暗さが走り、約三秒後、淡々とした声で言った。「もし間違っていなければ、あの時は私と嘉木が近くの山で釣りをしていて、あなたは友達と山登りをしていて、偶然出会って、嘉木がここで食事することを提案したんだと思います」