第142章 君も雨の日が好き?(6)

来栖季雄はここまで話すと、何か昔のことを思い出すかのように、少し黙り込んでから、また穏やかな声で続けた。「ほら、ある出来事がきっかけで、雨の日が好きになったんだ」

鈴木和香の心臓が一瞬止まりそうになった。彼が雨の日を好きになったのも、自分と同じように理由があったのだ……ただ、彼女は一人の人のせいで、彼はある出来事のせいで……

結婚してから初めて来栖季雄がこんなに穏やかに話してくれたせいか、少し大胆になって、心の中の疑問を思わず口にしてしまった。「どんな出来事で雨の日が好きになったんですか?」

来栖季雄は窓の外の大雨を見つめながら、一瞬悲しげな眼差しを見せた。「あの出来事で、僕の人生で一番大切な人と初めて近くで接することができたんだ……」

来栖季雄はここまで話して、突然自分が何を言ってしまったのかに気づき、急に言葉を止めた。