鈴木和香は返事をすると、手を伸ばしてドアを開けた。ノックした人に何の用かと尋ねようとした瞬間、来栖季雄が優雅な姿で立っているのを見て、和香は口を開いたまま、言葉が喉元で消えてしまった。
鈴木和香は浴室から出たばかりで、足元には濡れたスリッパを履き、体には浴用タオル一枚を巻きつけただけで、繊細で白い鎖骨と肩、そして長くまっすぐな両脚が露わになっていた。湯気のせいで、彼女の白い肌は薄紅色を帯びていた。
来栖季雄は和香を上から下まで見つめ、眉間を少しだけ寄せた。
「誰?和香?」馬場萌子は和香が動かないのを見て、素足で駆け寄ってきた。そして和香の前に立っている来栖季雄を見ると、すぐに恭しい声に変わった。「来栖社長。」
和香はようやく我に返り、来栖季雄の視線が自分に注がれているのに気づくと、無意識に胸元の浴用タオルを握りしめ、一歩後ずさりしながら、ドアに立つ季雄に尋ねた。「何かご用でしょうか?」