第233章 彼女だけは触れてはいけない!(3)

来栖季雄は険しい表情を浮かべたまま、エレベーターの前に直行し、開くボタンを押した。

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鈴木夏美が乗ったタクシーも、すぐ後に続いてホテルの前に停車した。夏美は車が完全に止まるのも待たずにドアを開け、ホテルの中へと駆け込んでいった。

夏美がホテルに入った時、来栖季雄はちょうどエレベーターに乗り込もうとしていた。彼女は急いで前に進み、季雄が向かう階を確認すると、別のエレベーターの前で必死にボタンを何度も押した。

エレベーターが一階に到着し、ドアが開くと、来栖季雄のアシスタントもちょうど走ってきた。二人は急いでエレベーターに乗り込み、季雄が向かった階のボタンを押した。

夏美はエレベーターから飛び出すと、廊下に立って左右を見渡した。左端の一番奥のドアの前に立って、ノックをしている季雄の姿が見えた。

夏美は唇を噛みしめ、バッグを手に持ったまま、季雄の立っている方へ走り出した。数歩進んだところで足を捻ってしまい、慌てて壁に手をついた。そしてハイヒールを脱ぎ、手に持って素足のまま走り続けた。

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林夏音は鈴木和香を我孫子プロデューサーの部屋に送り込んでから30分後、プロデューサーからメッセージを受け取った。シンプルな「気に入った」という三文字だった。

夏音は口元に笑みを浮かべながら、「楽しい夜を」と返信し、そのままベッドに横たわってくつろぎながらテレビを見始めた。

10時半頃、夏音はベッドから起き上がり、トイレに行って生理用品を交換した。鏡の前で生理中で膨らんだ胸を確認すると、普段より大きくなっていて、腰がより細く魅力的に見えた。胸の整形をしようかと考えていた時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

急いで連打するようなノックだった。

次から次へと。

夏音は胸から手を離し、少し苛立ちながらトイレを出て、「誰?」と声をかけた。

返事はなかった。

夏音は休憩室に遊びに行っていたマネージャーが戻ってきたのだろうと思い、ゆっくりとした足取りでドアまで歩いて行き、開けた。

しかし、顔を上げると、そこにいたのは来栖季雄だった。

男の表情は極めて冷たく、殺気を帯びていた。

夏音は全身に寒気が走り、思わず震えた。胸に不吉な予感が湧き上がる。