「昨夜は雫姉のおかげよ。私があなたを見つけられなかった時、状況を彼女に伝えたら、最初に異変に気付いて、防犯カメラを調べて、あなたが林夏音に連れて行かれたのを見つけたの。その時、あなたはもう薬が効いていて、意識が朦朧として、抵抗する力もなかったわ」
馬場萌子の説明に従って、鈴木和香の脳裏にぼんやりとした断片的な映像が浮かんできたが、それらは余りにも断片的で、繋ぎ合わせることができなかった。
「私はその映像を見た時、本当に怖くなって、夏美姉に電話して助けを求めようとしたの。でも雫姉が私の携帯を取り上げて、来栖スターに電話をかけたわ」
来栖季雄?鈴木和香の目に疑問の色が浮かんだ。
「その後、雫姉のアシスタントの一人が、林夏音の車が撮影所のホテルの下にあるのを見つけて、雫姉に電話したの。雫姉はそれを来栖スターに伝えて、その後のことは私は直接見ていないから、何が起こったのかわからないけど、後で雫姉から聞いたところによると、あなたは林夏音に我孫子プロデューサーの部屋に連れて行かれたそうよ...」ここまで話して、馬場萌子は何かを思い出したように付け加えた。「でも、この件は人に知られて大げさに広まると、あなたに不利になるかもしれないから、情報は既に封鎖されていて、知っている人はほとんどいないわ」