第341章 2つの「ごめんなさい」(21)

鈴木和香は来栖季雄の怒った姿を見たことがなかったわけではないが、今のような怒りの形相は初めて見た。顔つきが恐ろしく、まるで何か深い恨みでもあるかのようだった。

鈴木和香は来栖季雄のその眼差しに怯え、近寄ろうとした体が突然止まり、警戒しながら彼を長い間見つめていた。その後、特に過激な行動を見せなかったため、ようやく指を一本伸ばし、ゆっくりと彼の腕に近づき、素早く触れてすぐに引っ込めた。来栖季雄が先ほどのような強い反応を示さないのを見て、少し勇気を出し、おそるおそる近寄って、そっと来栖季雄の名前を呼んだ。

勇気を出したとはいえ、やはり自信がなく、鈴木和香の声は特に小さく柔らかく、優しい風のように来栖季雄の耳に入っていった。不思議な力を持って、奇跡的に彼の狂った怒りの心を鎮めた。彼の理性が少しずつ戻り、真っ赤だった目に次第に焦点が戻り、鈴木和香の慎重で警戒した表情をしばらく見つめ、完全に正気に戻った。

千代田おばさんは階下でテレビを見ていたが、鈴木和香の悲鳴を聞いて何か大変なことが起きたと思い、下から「奥様」と何度も呼びかけたが、返事がなかった。そこで急いで階段を上り、開いている書斎の扉まで来ると、中の光景を見て驚きの声を上げ、来栖季雄の口元に残る血を見て、すぐに大げさに叫んだ。「来栖社長、どうなさったんですか?」

千代田おばさんはそう言いながら近寄り、また驚きの声を上げて言った。「来栖社長、体にもこんなにたくさんの傷が...今すぐお医者様を呼んできます。」

「必要ない...」母親が病院で亡くなった関係で、来栖季雄は医者があまり好きではなく、かかりつけ医も置いていなかった。今は体中に傷があるものの、どれも深刻ではなかったため、淡々と制止した。

「でも...」これだけの傷で、しかも夏場に感染したらどうするのか、それに、もしガラスの破片が体内に残っていたらどうするのかと、千代田おばさんが反論しようとした時、鈴木和香の腕の傷を見つけ、すぐに話を変えた。「奥様、あなたも怪我をなさってるじゃありませんか?処置しないと跡が残りますよ。」

千代田おばさんのこの一言で、来栖季雄の視線は鈴木和香の腕に向けられ、傷口から滲む血を見て、先ほどの自分の行動を思い出し、眉間にしわを寄せ、すぐさま傍らの千代田おばさんに言った。「何をぼんやりしている、早く医者を呼んでこい。」