来栖季雄は鈴木和香の笑顔を見つめながら、今まで感じたことのない満足感と幸せを心の底に感じていた。この世の中で最も素晴らしいものは、きっとこういうものなのだろう。仕事がどんなに疲れていても、どんなに煩わしくても、愛する人のあたたかな笑顔に出会えること。
来栖季雄は鈴木和香の柔らかな表情をしばらく見つめた後、まばたきをして、優しい声で言った。「お腹すいただろう」
「大丈夫よ」一時間前は確かにお腹が空いていたけど、今は空腹感も落ち着いていた。
来栖季雄はテーブルから車のキーと財布を取り上げた。「行こうか、食事に連れて行くよ」
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来栖季雄は確かに鈴木和香を素晴らしい店に連れて行った。東京都の六歌仙は、一人当たり五桁の料金で、さらに20パーセントのサービス料がかかる。六歌仙は会員制で、ここで食事をするには、お金があるだけでは解決できないと言われている。さらに、ここの女性スタッフは、東京の最大のクラブ「六本木のクラブ」のホステス以上の採用基準があるとも言われている。