第517章 嫁げないなら、僕が娶ろう(17)

鈴木和香は来栖季雄と数秒間見つめ合い、説明を始めた。「簡単に言えば、私は今日、佳樹兄との婚約を解消したの」

来栖季雄の表情が一瞬凍りつき、鈴木和香を見つめる目には、深い驚きと信じがたい思いが浮かんでいた。

鈴木和香が一人だと言った時、来栖季雄の頭の中にはそんな考えが浮かんでいたが、確信が持てなかったため尋ねたのだ。しかし、彼女がこんなにも率直に答えを告げるとは思わなかった。

来栖季雄は、鈴木和香のその言葉に魂を揺さぶられたかのように、およそ30秒ほど硬直したままでいた。その後、表情が徐々に変化し始め、心配と痛ましさが入り混じった様子で、慎重に口を開いた。「和香、あまり落ち込まないで……」

実は最近、来栖季雄は心の中で、椎名佳樹の一件が発覚した後、どのように鈴木和香を慰めればいいのか考えていた。夜になると一人でこっそりネット検索をして、慰めの言葉を心に刻んでいたほどだった。しかし、実際にこの状況に直面すると、どんな言葉も空虚に感じられた。できることなら、彼女の代わりにこの悲しみや苦しみを引き受けたいとさえ思った。