おばあさんは来栖季雄が高校を卒業するまで面倒を見続け、季雄は奈良に行きましたが、当時はまだ家を買う余裕のなかった季雄は、大学の休暇で東京に帰るたびに、おばあさんの家に泊まっていました。
ほら、来栖季雄の暮らしがどんどん良くなり、おばあさんも一緒に幸せな生活を送れるようになりました。ただ、この二年ほど、おばあさんは年を取って少しぼけてきて、話がちぐはぐになってきました。
来栖季雄は仕事が忙しく、常におばあさんの面倒を見ることができません。おばあさんは健康で、老人ホームや病院に入れると何か問題が起きるかもしれないので、季雄はこの中年女性にお金を払って、年がら年中おばあさんの世話をしてもらっています。
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鈴木和香はおばあさんと一緒に家に戻ると、おばあさんは急いで部屋に入り、引き出しを探しまわって、しばらくしてから小さな証明写真を持って出てきて、和香の前に掲げて言いました:「ほら見て、あなたが季雄の嫁じゃないって言ったけど、これはあなたでしょう。」