スーパーはもうすぐ閉店時間で、人が多く、少し混雑していた。来栖季雄は鈴木和香と離れ離れになることを心配して、列に並んでレジを済ませるまで、ずっと彼女の手を握っていた。
スーパーは団地からそれほど遠くなかったので、来栖季雄は地下駐車場に車を取りに行かず、徒歩で帰ることにした。
夜風が優しく吹き、街灯が黄色く照らす中、来栖季雄は片手で買い物袋を持ち、もう片方の手で鈴木和香の手を握って団地の入り口へと向かった。近くの大通りでは車が行き交い、絶え間なくクラクションの音が鳴り響き、バス停には人々が列を作って待っており、歩道橋の下ではギターを抱えて恋歌を歌う人もいた……
鈴木和香は来栖季雄に握られた手のひらに汗が滲んでいるのを感じた。横を向くと、自分よりもずっと背の高い男性の端正な顔立ちが、街灯に照らされて息を呑むほど美しかった。鈴木和香は道端の街灯を一つ一つ数えながら、ふと思った。もし今の自分と来栖季雄の関係が半ば恋人同士だとしたら、今の心の中の感情は何なのだろう?半分恋をしているような感覚?甘くて、温かくて、少しドキドキする……それは彼女の人生で一度も経験したことのない温かな幸せだった。
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家に帰ると、鈴木和香は先に階段を上がってシャワーを浴びた。下りてきたとき、来栖季雄は既に下階の洗面所でシャワーを済ませ、薄い色の部屋着姿でソファに座ってビデオ通話をしていた。テーブルには半分に切ったスイカとスプーンが置かれていた。
鈴木和香が近づいたとき、来栖季雄は顔を上げて彼女を一瞥し、キャミソールのパジャマ姿だけを着ているのを見ると、すぐにビデオ通話を切って、テキストメッセージに切り替えた。
鈴木和香は来栖季雄が仕事で忙しいことを知っていたので、邪魔をせずに隣に座り、テレビをつけてスイカを抱え込んでスプーンで食べ始めた。途中、来栖季雄は彼女が何をしているのか気になったのか、振り向いて一目見て、手を伸ばして彼女の唇の端についたスイカの汁を拭い取った。
鈴木和香は甘えるように、自分の口に運ぼうとしていたスイカを来栖季雄の口元へと差し出した。来栖季雄は口を開けて受け取り、手を上げて愛おしそうに彼女の頭を撫でると、また画面に表示された他人からのメッセージに向かって返信を打ち始めた。