場所が遠かったため、通報してから約1時間後に警察が到着した。
侵入強盗は既に目を覚ましており、警察が彼を連行する際、犯人を気絶させた木の棒も証拠品として持ち去った。もちろん、鈴木和香も事情聴取のため同行し、田中大翔と馬場萌子も一緒に付き添った。
皆の予想通り、その男は近くの村の住人で、ギャンブルで多額の借金を抱え、年末が近づくにつれて債権者に追われ、家にも帰れず、このリゾート地をうろついていた。偶然、撮影隊がいるのを見かけ、窃盗の邪念を抱いたのだった。
この泥棒を誰が気絶させたのかについて、鈴木和香にも分からず、自分が目撃した状況をありのまま説明することしかできなかった。
誰が犯人を殴ったのかは分からないものの、殴られた方に非があったため、法的にも正当防衛であり、さらにその人物が突然現れなければ、人命が失われていたかもしれない。そのため、事情聴取後、警察は彼らを撮影現場に送り届け、ついでに鈴木和香の言う正体不明のヒーローを探して撮影現場周辺を捜索した。
おそらくその人物は既に立ち去っており、警察は暫く探したが見つからず、諦めて帰っていった。
真夜中にこのような出来事があり、片付けが終わった時には午前4時を回っていた。田中大翔と馬場萌子は疲れ果てて、それぞれの部屋に戻るとすぐに眠りについた。
鈴木和香のベッドには大きな血痕が付いており、気持ち悪かったため、馬場萌子のベッドで一緒に寝ることにした。馬場萌子の寝息を聞きながら、彼女は少しも眠気を感じず、ドアを見つめたまま眉間にしわを寄せた。
一体誰が、あんなにタイミングよく現れて、犯人を気絶させたのだろう?
当時、彼女も死の淵から逃れたばかりで動揺していたため、注意力も散漫で、ただ背の高い細身の影を見ただけで、まばたきする間に、その影はドアの外に消えていた。
来栖季雄を恋しく思いすぎているせいか、一瞬見えたその影が、記憶の中の彼の姿と重なって見えた気がした。
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鈴木和香は6時まで考え事をしていたが、やっと目を閉じ、2時間も眠らないうちに馬場萌子に起こされた。
その後は忙しくメイクをし、カメラテスト、そして撮影が始まった。