第652章 携帯の中のメッセージ(2)

鈴木和香は落ち着いて椅子に座り、メイクの直しに近づいてきたメイクアップアーティストに手を振って制した。

メイクアップアーティストは鈴木和香の意図が分からず、ただ横に立ち尽くすしかなかった。

少し離れた場所にいた林夏音は、この光景を見て冷笑し、落ち着き払って顎を上げ、自分のメイクアップアーティストにメイク直しをさせていた。

撮影現場を確認し終えた監督が、メイクルームに戻ってきて、二人のメイク直しが終わったかどうか確認しようとしたが、鈴木和香がきちんと座ったままメイク直しを始めていないのを見て、思わず眉をひそめた。「和香さん、まだメイク直ししていないんですか?」

鈴木和香は目の前の二つの台本を見つめ、妥協の余地なく、最初の台本を指差して言った。「この台本なら撮影しますが、こちらの台本なら撮影しません。」