二、三歩歩いたところで、松本雫は突然足を止めた。彼女も何かを感じたかのように、椎名佳樹に背を向けたまましばらく立っていた。そしてゆっくりと振り返り、少し冷たい視線で、まっすぐに椎名佳樹と目が合った。
久しぶりの再会で、彼はかつての粋な雰囲気を失っていた。着ている服はしわくちゃで長く着ているようで、髪はぼさぼさ、顔色は疲れて憔悴していた。
しかし、それらはもう彼女には関係なかった……彼は彼女の良き人ではなく、彼女も彼のために時間を無駄にする必要はなかった。
松本雫はそう思いながら視線を外し、椎名佳樹がまるで何の関係もない見知らぬ人であるかのように、歩みを進め続けた。しかし、二歩も歩かないうちに、背後からあの馴染みのある声が聞こえた。「雫」
松本雫の足取りはほんの少し遅くなっただけで、それもほんの一瞬だけ。立ち止まることもなく、誇り高く歩き続けた。