第769章 椎名佳樹の決断（28）

「他人？」鈴木和香のスキャンダルが大騒ぎになっていたので、司会者も耳にしていたようだ。「椎名佳樹さんのことですか？」

来栖季雄は「うん」と答え、確かな返事をした。

「ここまで話が及んだところで、最近ネット上で騒がれている噂についても触れないわけにはいきませんね。」司会者の態度は一瞬にして真剣になった。「来栖社長もネット上に公開されたあの写真をご覧になったと思いますが、先ほど社長ご自身もおっしゃったように、鈴木さんと椎名さんには婚約関係があったわけです。それで、お聞きしたいのですが、鈴木さんと椎名さんの離婚は、ネット上で噂されているように、本当に来栖社長と関係があるのでしょうか？」

おそらく来栖季雄本人がその場にいたため、司会者の質問は以前桜花苑で詰め寄ってきた記者たちほど鋭くも直接的でもなく、むしろかなり遠回しだった。

しかし、その意味するところは同じだった。要するに、ネット上で暴露されたスキャンダルのように、鈴木和香は結婚中に不倫をし、来栖季雄のために椎名佳樹を捨てたのかということを尋ねていたのだ。

来栖季雄はこの質問をされた時、表情は少しも変わらず落ち着いていた。まるでネット上で罵倒されている人物が鈴木和香ではないかのように。彼が口を開いた声は、先ほど環映メディアの将来の発展方向について語った時と同じくらい淡々としていた。「みんながあの写真を事実として受け止めているのなら、私がこの質問に答える必要があると思いますか？」

司会者は来栖季雄の反問に一矢報いられ、一瞬戸惑った後、笑いながら言った。「来栖社長のおっしゃることは、実際には事態は皆が思っているようなものではないということですか？」

来栖季雄は先ほどと同様、この質問に正面から答えることなく、再び反問した。「もし私がそうではないと言ったとしても、誰が信じるでしょうか？」

今度は司会者が言葉に詰まってしまった。

来栖季雄は軽く息を吸い、続けた。「もし男が本当に女性を好きなら、彼女の名誉を傷つけようとは思わないでしょう。」

「もし私が本当に横取りしたかったのなら、5年前の彼らがただの婚約関係だった時に手を出せばよかったのです。私は自分の深い愛を愛せない深い愛にする必要はなかったし、私と彼女の間の丸5年を失うのを黙って見ている必要もなかったでしょう。」