第785章 私は妊娠しました(5)

椎名佳樹はこの質問を投げかけると、長い沈黙に陥った。彼はずっと正面を見つめ、まぶたも下がっていた。

彼は落ち着いているように見えたが、大画面を通して彼のクローズアップされた顔には、何か決断しがたいことと闘っているかのような、わずかな葛藤の色が浮かんでいた。

椎名佳樹は丸一分間黙り込んでいた。もう何も言わないだろうと皆が思った瞬間、彼は突然ポケットからUSBメモリを取り出し、隣の司会者に渡して言った。「お手数ですが、この中にある唯一の音声ファイルを、皆さんに聞かせていただけますか。」

司会者は少し戸惑いながらも、「わかりました」と答えた。

彼がそのUSBメモリを受け取ろうと手を伸ばした時、椎名佳樹は突然力強くUSBメモリを引き戻した。彼の顔色は少し青ざめ、唇をきつく結んでいた。しばらくしてから、最終的にそのUSBメモリを司会者の手に置いた。

すぐに会場には会話の音声が流れ始めた。

「お母さん、一つ質問してもいい?」

「佳樹、どうぞ」

「兄さんが和香のことを好きだってこと、前から知ってたの?」

「佳樹、急にそんなことを聞いて、どうしたの?」

「お母さん、あの時僕は病院で昏睡状態にあって、いつ目覚めるか医者にも分からなかった。そして当時の椎名グループは非常に危険な状況だった。椎名グループを守るために、兄さんと和香を呼んだんだよね。実は僕ずっと考えていたんだ、兄さんの性格からして、どうして突然僕を演じるという提案に同意したのか。今になってやっと分かった、和香のためだったんだね。」

「佳樹……」

「お母さん、兄さんが和香のことを好きだって前から知ってたでしょう?当時、和香を餌にして、彼を説得して僕を演じさせ、和香と偽の夫婦を演じさせたんでしょう?」

「佳樹、あなたはずっとお母さんに会いに来なかったじゃない。やっと帰ってきたのに、あの雑種…彼らのことを話さないでくれない?」

「お母さん、ネット上のあのニュースはお母さんがリークしたんでしょう?兄さんと和香の住所も、お母さんが記者に教えたんでしょう?それに、兄さんと和香が食事をしている写真も、僕が破るように言ったのに、なぜ破らずに隠しておいたの?お母さん、兄さんと和香は僕たちを助けてくれたのに、なぜ今になって彼らの助けを利用して、彼らを傷つけるの?」