第835章 危機(5)

鈴木夏美が「確認」ボタンを押した瞬間、携帯電話が連続して二回チャイムを鳴らした。それはまた来栖季雄からのメッセージだった。しかし、鈴木夏美は「義弟」という言葉を見て、不快だった気持ちが少し和らいだ。

メッセージを開くと、まず目に入ったのは来栖季雄が送ってきた写真だった。それは薄い青色のドレスで、ハンガーにかけられており、下には同じ色系のハイヒールが置かれていた。

鈴木夏美はしばらく呆然としてから、続きを読んだ:【私は来栖季雄です。あなたが最初から和香との結婚式に参加すると約束してくれなかったことは知っています。和香もあなたが来ないことを知っていますが、それでも特別にあなたのためにドレスをオーダーメイドさせました。それから、ボイスレコーダーのことについては、和香は知りませんし、これからも知ることはありません。】

わずか数行の文章だったが、それでも来栖季雄の行動スタイルが感じられた。シンプルで直接的に本題に入るという。

鈴木夏美はソファに横たわり、携帯電話に映る空色のドレスとハイヒールをじっと見つめ、長い間まばたきひとつしなかった。

約3分ほど経った頃、涙が彼女の目尻から流れ始めた。どんどん増えていき、最後には鈴木夏美は声を上げて泣き出した。

そのドレスとハイヒールは、3年前に鈴木和香と一緒にテレビを見ていた時、彼女が気に入った美しいブライズメイドドレスだった。そのとき彼女は和香に指さして言ったのだ。将来和香が結婚する時、絶対にブライズメイドになるつもりだと。そして和香に全く同じドレスを用意してもらって、新婦よりも美しく輝くつもりだと。

当時は冗談で言ったのに、いつの日か、和香が結婚することになり、彼女が昔好きだったそのドレスを本当にオーダーメイドしてくれるとは思わなかった。

当時のそのシーン、テレビでは一瞬だけ映ったのに……彼女は翌日の再放送を見て、わざわざ保存していたのだろうか?

それに、来栖季雄の最後の一言はどういう意味だろう?

鈴木和香は彼を13年間好きだった。彼も鈴木和香を13年間好きだった。若い頃、彼女の自己中心的な行動のせいで、本来なら自然に結ばれるはずだった二人は、愛の中で最も遠回りな道を歩むことになった。しかもその道のりは非常に苦しいものだった。