第845章 エピローグ(5)

若い頃、一時の衝動を一生の執念と勘違いする人がどれほどいるだろうか?

本当の愛とは、自己中心的なものではなく、相手を成就させることなのだ。

あの時、来栖季雄が鈴木和香にあれほど優しくしているのを見て、彼女が怒ったのは、まだ季雄を愛していたからでも、和香に嫉妬していたからでもなく、ただ納得がいかなかったからだ。不服だったのだ。

結局のところ、彼女の愛が足りなかったのだ。

本当に誰かを愛しているなら、その人を少しでも困らせることなどできるだろうか?

なぜなら、彼が辛ければ、自分はもっと辛くなるのだから……

残念ながら、今になってようやくその道理が分かったのだ。

鈴木夏美の目から一筋の涙がこぼれ落ちたが、彼女は田中大翔に向かって浅く微笑んだ。その笑顔は、以前の彼女の傲慢で華やかな笑いとは全く異なり、柔らかく澄んだ笑顔で、無邪気な子供のように純粋だった。

「大翔、もし私が…生きている間に、あなたに出会えることを…知っていたら…あの時…あの時、きっと自分を放任して…あんなに多くの…」

夏美がここまで言ったとき、急に言葉が途切れ、唇の端から鮮血が溢れ出した。彼女のまぶたは明らかに閉じ始めていた。彼女は必死に目を開けようとし、大翔をもう少し見ていたかったが、最後の三つの言葉「彼氏たち」を言い終えたとき、ついに耐えきれず、ゆっくりと目を閉じた。

彼女の言葉はすべて本当だった……かつて彼女は季雄が最愛の人だと思っていた。彼を手に入れられないなら、誰と付き合っても構わないと思っていた。ただあの方法で、季雄に間接的に伝えたかったのだ。鈴木夏美には求める人がたくさんいるのだと。

若さゆえの迷いだった……いつか本当に手を取り合って一生を歩みたいと思う人に出会ったとき、初めて後悔というものを知るのだ。

もし人生をやり直せるなら……もし時間を巻き戻せるなら……もし将来本当の愛に出会うことを知っていたら、彼女は絶対に、絶対に、絶対に良い女の子になっていただろう。

しかし、ある道理は、紙に書かれているだけでは理解できない。自分で歩んでこそ、その言葉の奥深さが分かるのだ。

夏美はどれほど目を開けて大翔をもう一度見たいと思ったことか。しかし、まぶたは接着剤で貼り付けられたかのように、どれだけ力を入れても上がらなかった。

この瞬間、彼女の心の底に恐怖が芽生えた。