第19章 策に策で対抗2

鈴木知得留は深く息を吸い、食卓へと向かった。

その時、根岸佐伯は不機嫌な表情を浮かべていた。先ほど無礼なウェイターにぶつかられて服が汚れてしまい、怒りたかったが立場上我慢するしかなかった。鈴木知得留が戻ってくるのを見て、すぐに笑顔で「お姉さん」と声をかけた。

鈴木知得留は彼女の先ほどの表情を見なかったふりをして、席に着くと淡々と言った。「もうすぐ田村厚が来るわ」

「直接話し合うつもり?」と根岸佐伯は尋ねた。

「うん」鈴木知得留は頷いた。

根岸佐伯は口元に笑みを浮かべた。「そうするべきよ。何事もはっきりさせた方がいいわ」

鈴木知得留は根岸佐伯の陰謀を暴くつもりはなかった。おそらく今夜、彼女を田村厚のベッドに送り込もうとしているのだろう。彼女と田村厚の関係を確実な証拠として掴み、弁解の余地を与えないつもりなのだ。今、田村厚が来ることで多くの手順が省けるため、当然喜んでいるのだろう。