第152章 恨鉄不成鋼(5更)

冬木邸。

一室にて。

加藤渚がドアの外から入ってきた。

冬木郷は母親を見て、「母さん、僕はもう大人だから、次からドアをノックしてから入ってくれない?」

冬木郷が帰国して二日が経っていた。

鈴木知得留の事故で北洋国に一日余計に滞在した後、専用機で先に帰国し、知得留の事故について適切な説明をすると約束された!

「まだ若いくせに、もう私を嫌がるの!」加藤渚は不機嫌そうに言った。

冬木郷は目を白黒させ、それ以上は何も言わなかった。

加藤渚は気にせず、興奮気味に言った。「さっき書斎の前を通ったら、お兄さんとお父さんが喧嘩してたわよ。」

「母さんってば、人の不幸を喜ぶんだから。」

「バカね!お父さんとお兄さんの仲が悪いのは、誰の得になると思う?」加藤渚は呆れた様子で言った。

冬木郷は目を白黒させた。

自分の実力なんて、よく分かっている。

冬木空というモンスターに勝てるわけがない!

「分からないわ。冬木空は表面上お父さんに従順そうに見えて、実際はお父さんの言うことを全然聞かないのに、いつもお父さんを怒らせているのに、それでもお父さんは冬木空を重用し続けるの。目が見えてないの?もう一人息子がいることに気付かないの?」加藤渚は不満げに文句を言った。

週に少なくとも三回は聞く台詞だ。

冬木郷はもう慣れっこになっていた。

以前はあまり言い返さなかったが、今日は我慢できずに言い返した。「父さんが母さんみたいに目が利かなかったら、冬木グループはとっくに破産してたよ。」

「冬木郷、私はあなたの母親よ。もう少し敬意を示しなさい。」

「事実を言ってるだけだよ。誰が見ても冬木空は僕より何倍も優秀だってわかる。父さんが能力不足の人間に冬木グループを任せるほど判断力を欠いてるわけないでしょ。」冬木郷は率直に言った。

「冬木郷、どうしてそんなに向上心がないの。」加藤渚は息子の腕を叩きながら、怒って言った。

冬木郷はじっと耐えていた。

向上心がないわけじゃない。

子供の頃は頑張ろうと思ったこともある。冬木空は自分より二歳年上で、父は冬木空に無限の期待を寄せていた。自分も嫉妬して、父の注目を集めたくて、一生懸命努力したこともあった。でも……いつでも、完膚なきまでに叩きのめされた。

粉々に砕かれるほどに。

だから諦めたんだ。