夜も更けた頃。
道明寺華は北村忠をじっと見つめていた。
こんな深夜に、なぜ突然彼が自分の家の玄関に現れたのか分からなかった。
彼女は瞳を真っ直ぐに彼に向けた。
北村忠は気軽に中に入り、遠慮なくソファーにどかりと座った。
道明寺華は北村忠の突然の気まぐれにも慣れていたようで、何の反応も示さず、その時はむしろ機嫌が良さそうだった。
北村忠は言った。「夜、記者があなたを撮影したよね?」
道明寺華は頷いた。
北村忠は続けた。「今、私たちは先手を打って状況を説明しておく必要がある。将来的にはまだ面倒なことがあるかもしれないけど、少なくとも、できるだけ誹謗中傷を避けたいんだ。」
道明寺華は北村忠が何を言っているのか分からなかった。
実際、彼女は全く気にしていなかった。
どうせ残された時間も長くないのだから、何を気にする必要があるだろうか。
北村忠は多くを語らず、スマートフォンを取り出して華に向かって言った。「さあ、動画を撮ろう。」
道明寺華は近くに座った。
北村忠は動画の角度を調整し、テーブルの上に置いて、二人が画面に収まるようにした。
準備が整うと、北村忠は動画に向かって話し始めた。「みなさんはあのスーツ姿の人が誰なのか気になっているでしょう?みなさんは彼女がどんな顔をしているのか見たがっています。そう、本来なら私は彼女をカメラの前に出したくありませんでした。それは彼女に負担をかけたくないという私の我儘でした。今、よく考えた末、彼女をみなさんに紹介することにしました。みなさんもご覧になったと思いますが、彼女は男性ではなく、れっきとした女性です。そして、彼女は他でもない、私の彼女、道明寺華です。」
最後の言葉で、道明寺華は北村忠の方を見た。
彼女?
鈴木知得留が言っていた恋人、つまりこの彼女のことか?
北村忠が道明寺華を彼女だと言ったのは、以前彼女を利用して噂を流したことがあったからで、今回道明寺華が再びカメラの前に現れることになり、当然この立場を装う必要があった。もちろん、それは彼が道明寺華を保護しようとする理由をより良く説明することにもなった。