「私は多くを語らない」冬木雲雷は一字一句はっきりと言った。「お前と鈴木知得留との結婚は、ここまでだ」
冬木空は冬木雲雷を見つめたが、動じる様子はなかった。
冬木雲雷も息子を強制できないことは分かっていたが、その時はっきりと言い切った。「我が冬木家は名門の末裔でもなく、高い地位や権力もないが、東京では顔の利く財閥だ。最近、次々と家の中で負の報道が続いている。以前の妹の冬木心のことは言うまでもないが、木村文俊とのことで大騒ぎになり、上流社会で我が家の面目を失った。今では木村文俊もそれなりに名を上げ、もちろん我が冬木家と比べれば取るに足らないが、少なくとも自分の事業を持っている。今は大人しく暮らしているから目をつぶることもできる。どうせ冬木心に我が家の名誉を高めてもらうことは期待していなかったからな」