三十分後。
青木晴人は君島博からの連絡を受け、側近の加藤章と共にオフィスを出た。
エレベーターに乗り込むと、鈴木知得留と鉢合わせた。
青木晴人は鈴木知得留を一瞥した。
「青木さんはお帰りですか?青木さんにサインしていただきたい書類があるのですが」と鈴木知得留は尋ねた。
「戻ってからにしろ」
「青木さんはお急ぎですか?書類が急ぎなものですので」
「戻ってからだ!」青木晴人は不機嫌な顔をして、「どんなに急いでも待て」
鈴木知得留はただ彼を見つめていた。
青木晴人はエレベーターに乗り込み、鈴木知得留も降りなかった。
鈴木知得留は自分の階のボタンを押した。
加藤章は一階ロビーのボタンを押した。
鈴木知得留は青木晴人の隣に立ち、「青木さんは今日のニュースをご覧になりましたか?」と声をかけた。
青木晴人の表情は険しかった。
「私だけじゃなく、金田チーフと青木さんがよく似ているって思う人がいるんですね」
「何が言いたい?!」青木晴人は怒りを露わにして鈴木知得留に向かった。
突然の激昂は、まるで痛いところを突かれたかのようだった。
「ただの世間話です」鈴木知得留は微笑んで、エレベーターが到着すると降りながら言った。「青木さんが戻られましたら、秘書の方から連絡いただけますか?サインをいただきに伺います」
エレベーターのドアが閉まった。
青木晴人の表情は明らかに険しいままだった。
加藤章は傍らで注意を促した。「鈴木知得留は冬木空と一味です。彼女に故意に怒らされないよう気をつけてください。今は態勢を整えることが最も重要で、乱れてはいけません」
「黙れ!」青木晴人は加藤章を激しく叱りつけた。
今の彼には冷静さを取り戻す余裕などなかった。
もし彼と金田貫一の父子関係が発覚したら、これからどうやって商業管理機構のトップとしてやっていけるというのか!
エレベーターが一階に到着し、青木晴人は怒りに任せて出て行った。
商業管理部の外には黒い乗用車が停まっていた。
青木晴人は専用車に乗り込み、加藤章と二人のボディーガードが同行した。
先導の車が道を開き、青木晴人の車がその後に続いた。
鈴木知得留は自分のオフィスに立ち、床から天井までの窓から通りを走り去る黒い車を見つめながら、電話をかけた。「青木晴人が出かけました」