第539章 冬木心のために華を諦めて価値があったのか?(1更)

広橋香織は胸の前で息を飲んだ。

くそったれの北村忠、冬木心を愛するのにここまで法も道理も無視するのか?!

彼女は内なる洪荒の力を抑えきれず、北村忠に向かって怒鳴った。「北村忠、この外道め!お前と冬木心が虎を奪おうと企んでいたなんて、お前は冬木心を愛するあまり良心まで失ったのか?!」

北村忠が説明しようとした時。

冬木心は急いで言った。「おばさま、北村忠を責めないでください。彼も皆のためを思ってのことです。道明寺華には今、彼女の道があります。虎と一緒にいることは彼女のキャリアの妨げになっています。おばさまも今日の国際大会での道明寺華の試合をご覧になったでしょう。彼女は明らかに国際舞台で輝くことができるのに、虎のために自分の未来を諦めるべきではありません!彼女はまだこんなに若いのです!本当にそんな犠牲を払う価値はありません!」

「価値があるかないかは、お前が決めることじゃない!」広橋香織は怒鳴った。

「今の私が何を言っても間違いだと思われることは分かっています。皆さんの目には私は所詮よそ者なのでしょう。でも、私は本気で北村忠と一緒になりたいと思っているからこそ、はっきりさせておきたいのです。」冬木心は頑なに、他人の感情など一切気にせず続けた。「皆さんはいつも道明寺華が不当な扱いを受けていると思っています。そうです、私も認めます。北村忠と道明寺華の関係において、道明寺華が見捨てられたことは人道的な観点から見れば確かに不当でした。でも、皆さん考えたことがありますか?これら全ては誰が引き起こしたのでしょうか?道明寺華自身ではないですか?いいでしょう、道明寺華が虎を産んだということで、皆さんが彼女に同情的な気持ちを持つのは理解できます。でも、同情は同情として、虎の親権を取り戻すことは別の問題です。皆さんは本当にこれらを混同してはいけないと思います!」

「冬木心、お前は一体うちの何様のつもりだ?ここで好き勝手なことを言える立場じゃないだろう?!」広橋香織は彼女への嫌悪感を全く隠そうとしなかった。

冬木心は言った。「私は北村忠の恋人です。」

「つまり、まだ結婚もしていないってことね?!」広橋香織は眉を上げた。

その意味は明らかだった。結婚もしていないのに、うちの家のことに口を出す資格なんてないということだ!