カウントダウン10秒。
ゲーム画面に入ると、会場は静まり返った。選手のプレイに影響を与えないようにしているかのようだった。
道明寺華は豹に変身できるヒーローを選んだ。
豹のスキンは虎に少し似ていて、その瞬間、道明寺華はジャングルで突然立ち止まった。
突然動かなくなった。
頭の中で冬木心が先ほど言った言葉が響いていた。
彼女は唇を噛んだ。
集中できない。
確かに数秒間の気の緩みがあった。
ゲーム一試合は早ければ10分程度で、一つの団体戦は数秒で決まることもある。
道明寺華の突然の硬直に、他のメンバー全員が驚き、動揺し始めた。
「華」とイヤホン越しに元が呼びかけた。
道明寺華は我に返った。
ジャングラーとして経済は重要だ。相手は既に最後の中立モンスターを倒してレベル4になっているのに、道明寺華はまだ最初のエリアで2体目のモンスターを倒している段階だった。
道明寺華は歯を食いしばった。
会場全体が落ち着かない様子だった。
先ほどの道明寺華の行動が全く理解できなかった!
配信プラットフォームでも次々とコメントが流れた。「道明寺華は何をしているんだ?」
「彼女は正気を失ったのか?動かないなんて?」
「相手のジャングラーの経済が彼女より遥かに上だぞ、何を考えているんだ?」
「マジかよ、Joeチームの神話はここで終わりか!」
「もう見てられない。結果発表を待つだけだな!」
全国のゲームファンたちは自暴自棄になりかけていた。
北村忠もその時死ぬほど緊張していた。
道明寺華のバカは何をしているんだ?こんな時に放心状態になるなんて?
全世界の人々に非難されたいのか?
北村忠は自分の手のひらに汗をかいているのを感じた。本当に道明寺華のために冷や汗をかいた。
冬木心はむしろ笑みを浮かべた。
おそらく全世界で道明寺華と彼女以外、誰も道明寺華が何故調子を崩しているのか分からないだろう。
彼女は冷ややかに笑った。
今日以降、道明寺華は全国民の敵となり、袋叩きにされるだろう!
彼女はそう冷たく見つめていた。
配信カメラが全て道明寺華の顔に向けられているのを見ながら。
道明寺華の表情は淡々としており、この状況下では何の感情も読み取れないようだった。
彼女はジャングル攻略とレベル上げを続けた。