北村忠はそのまま道明寺華が近づいてくるのを見つめていた。
彼は柔らかな唇が自分の唇に触れるのを感じた。実際にはそれほど力強くなかった。
北村忠の涙は狂ったように止めどなく流れ落ちた。
その瞬間、道明寺華の意思に従い、噛み砕いた薬を再び彼女の口の中に入れた。
道明寺華は護心丸を全て飲み込んだ。
彼女は北村忠から離れた。
離れた瞬間、北村忠は突然道明寺華を抱きしめ、彼女の唇を再び強く押し付け、深く口づけた。
道明寺華の瞳が僅かに動いた。
彼女は顔を上げて北村忠を見つめ、涙に濡れた彼の顔を見た。
心の中で、何か動くものを感じた。
その瞬間、彼女は北村忠を押しのけるだけの力がないのではなく、押しのけようと思わなかったことを明確に理解していた。
北村忠は心を痛めながらキスをした。