第25章 ぶん殴ってやる

その時、安藤秘書はボディーガードたちと共に路地に駆け込んだ。訓練された警備員たちは素早く数人の男たちを制圧し、壁に押し付けた。

安藤秘書は林田茜の乱れた服装と髪、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった化粧を見て、その惨めな姿に目を背けたくなった。

この傲慢なお嬢様に好感は持てなかったが、紳士として自分のスーツの上着を脱ぎ、思いやりを込めて彼女に差し出した。「林田さん、とりあえずこれを羽織ってください」

林田茜は恐怖で呆然としており、十数秒経ってから安藤秘書を見上げた。彼の上着には目もくれず、「あの...侑樹さんも私を助けに来てくれたの？」と尋ねた。

安藤秘書が答える前に、彼女は自ら地面から立ち上がり、よろめきながら外へと走り出した。

江口侑樹の姿を見るなり、林田茜はさらに激しく泣き出し、「侑樹さん、うぅ...私、すごく怖かったの...」と訴えかけた。

彼女は急いで江口侑樹の前に駆け寄り、両手を伸ばして抱きつこうとした。

彼女の手が男の服に触れようとした瞬間、江口侑樹は振り返り、冷ややかな視線を彼女に向けた。林田茜は心臓が震え、思わず手を引っ込めた。

この2年間、江口侑樹は確かに彼女を甘やかしていた。彼女が欲しがるものは何でも届けさせ、かつての園田円香への寵愛以上だと言われていた。

しかし江口侑樹は潔癖症で、他人が勝手に触れることを嫌っていた。パーティーなどの社交の場で、礼儀として腕を組むことができる程度だった。

もちろん彼女も不満に思ったことがあり、一度、若林麗の唆しに乗って大胆にも彼の胸に飛び込もうとしたが、手首をほとんど折られそうになった。

それ以来、彼女は恐れを抱き、軽々しく彼に触れることはなくなった。

しかし今、林田茜は恐怖と悔しさで我慢できず、再び手を伸ばし、江口侑樹の服の端を軽く引っ張りながら、かすれた声で訴えた。「侑樹さん、もし少し遅かったら、私...私...この下品な暴漢たちを必ず仕返ししてください！殺してください！」

彼女の体は侑樹さんのために取っておくべきもの。汚されそうになったことを思うと、歯ぎしりするほど腹が立った！

この光景を園田円香の目には、まさに才子佳人の絵に見えた。

彼女の唇の嘲笑的な弧は一層深くなり、心の底には微かに気づきにくい不快感が漂っていた。