自分の目を疑い、園田円香は慌ててビデオを一時停止し、注意深く確認した。
その人は簡素なシャツと長ズボンを着て、大きな縁のメガネをかけており、いつものように穏やかで知的な雰囲気を漂わせていた。
やはり彼だ!海外で知り合った佐藤先生だ。
これまで彼に会うたびに白衣姿だったため、最初は気づかなかったのだ。
ただ、救急科の一医師が、このような重要な医学会議に招待されるとは思いもよらなかった。
園田円香は軽く唇を噛み、瞳に微かな光を宿した。
名医が誰なのかは分からなかったものの、この予期せぬ収穫は天の助けと言えるだろう!
佐藤先生がこの会議に参加したということは、きっと名医が誰なのか知っているはずだ。彼の優しい性格と、これまでの付き合いを考えれば、彼から名医の情報を聞き出せるかもしれない!
園田円香は先ほどの暗い気持ちを払拭し、唇の端にかすかな笑みを浮かべた。
この佐藤先生は、昔から今に至るまで...本当に彼女の恩人なのだ。
医学会議は数時間続くため、円香は早朝から来ていた。朝食も取らず、水すら一口も飲んでいなかった。撮影機材を片付けてホテルの向かいのカフェに行き、簡単なサンドイッチを食べ、目を覚ますためにコーヒーを一杯飲んで、すぐに戻って待機を続けた。
成功の鍵は、油断せず、どんな細部も見逃さないことだ。
戻ってきてから、彼女は再びカメラを設置し、録画を確認しながら会議の終了を待った。
数時間後、エレベーターホールにようやく動きが出てきた。
会議が終わったようだ!
園田円香は素早くビデオカメラをカバンにしまい、手足を伸ばして、佐藤先生を見かけたら声をかける準備をした。
帰国後に携帯電話と番号を変更したため、彼の連絡先を失ってしまい、直接電話することができなくなっていた。
エレベーターの階数表示が下がっていく中、円香の注意は全てエレベーターのドアに集中していた。
チンという音とともにエレベーターのドアが開き、医師たちが出てきた。
佐藤先生は見分けやすかった。若くて背が高く、端正な顔立ちで、年配の医師たちの中で特に目立っていた。
彼がエレベーターを出た瞬間、園田円香は群衆の中から一目で彼を見つけ、「佐藤先生」と呼びかけた。
呼びかけながら、彼の方へ歩み寄った。