第95章 妊娠しているの?

園田円香は少し驚いた。若林麗がなぜ病院にいるのだろう?

前回の林田氏夫妻の銀婚式パーティー以来、彼女に会っていなかった。そもそも、彼女たちは親しくもなく、接点もなかった。

彼女は視線を外し、歩き出そうとした。

若林麗も彼女を見かけていた。すぐに声をかけてきた。「園田円香さん、あなたですか?」

彼女は呼びかけながら、近づいてきた。

園田円香は仕方なく足を止め、彼女を見た。淡々とした口調で「何か用?」

「ここで会えるなんて思いもしなかったわ。どうしたの?体調でも悪いの?」若林麗は質問に答えず、むしろ気遣うような口調で、まるで親しい友人のような態度を取った。

園田円香は眉をひそめた。

若林麗という人物は、野心が大きく、心が邪悪で、やることなすこと汚い手段を使う。いわゆる道が違えば共に歩めない。彼女とは不必要な関わりを持ちたくなかった。

「私は大丈夫です」園田円香は礼儀正しく距離を置いて答えた。「他に用がないなら、私は行きます」

「ちょっと」若林麗は彼女の前に立ちはだかり、笑顔を浮かべながら、「園田円香さん、そんなに警戒することないわ。私はあなたに何かしようとしているわけじゃない。ただ...お礼を言いたかっただけよ」

「正直に言うと、今の私があるのは、あなたのおかげなの。もしあなたが告訴を取り下げてくれなかったら、私は今も刑務所にいたはずよ」

そう言いながら、彼女は自分のお腹に手を当て、優しくさすった。

その仕草を見て...

園田円香は何かに気づいた。「妊娠したの?」

「ええ」若林麗の目には明らかな得意げな色が浮かんでいた。「二ヶ月半よ。北斗の子どもなの。ただ、今はまだ胎児が安定していなくて、流産の危険があるの。北斗が心配して、入院して静養するように言ったの」

病棟で彼女を見かけた理由が分かった。なるほど。

園田円香が当時若林麗への告訴を取り下げ、彼女を釈放したのは、選択の機会を与えたかったからだ。これからは真面目に生きていくのか、それとも相変わらず手段を選ばない生き方を続けるのか。

結局、若林麗は後者を選んだ。

「私にお礼を言う必要はありません。これはあなた自身の人生で、あなた自身の選択です。私には関係ありません」