かつて彼女も染野早紀のように、いつでもどこでも、嬉しい時も悲しい時も、江口侑樹に電話をかけたいと思えば、何の躊躇もなくかけることができた。
それは相手が甘やかしてくれていたから。そして、自分が頼りにしていたのも、その甘やかしだけだった。
でも今は、もう何も頼れるものがない。
向こうで秦野慶典は電話に出て、染野早紀は腰に手を当てて、声高らかに罵り始めた。長々と続く罵倒の言葉は一つも重複することなく、舌鋒鋭く畳みかけていく。
園田円香はグラスを抱えながら一口一口酒を飲み、染野早紀が秦野慶典を皮肉たっぷりに責め立てるのを見ていた。彼女の瞳には羨ましさが滲んでいた。
この酒は後から効いてくるタイプで、徐々に頭がぼうっとしてきた。理性が少しずつ薄れていき、彼女の視線はゆっくりと自分の携帯電話に向かう。手を伸ばして取り、取っては置き、また取って、また置く。そんなことを繰り返していた。
何度繰り返したかもわからない。頭はますます朦朧とし、視界はぼやけていく。そして最後に、酔いが完全に脳を支配し、周りの全てが遠ざかっていった……
…
翌日。
園田円香はゆっくりと目を開けた。数秒間呆然としていたが、すぐに記憶が脳裏に蘇ってきた。二日酔いの頭痛に眉間を寄せ、思わず額に手を当てた。
少し落ち着いてから、ベッドサイドテーブルを見ると、水の入ったコップと薬が置いてあり、その横に付箋が貼ってあった。
付箋を手に取ると、染野早紀の力強い字が目に入った:起きたら二日酔い薬を一錠飲んで。朝ご飯はテーブルの上。温め直せばすぐ食べられるわ。ちょっと用事があって出かけるけど、急用があったら電話して。
後にPSがあった。記者たちがあなたの携帯にしつこく電話してくるから、機内モードにしておいたわ。
園田円香は温かい気持ちで微笑んだ。まず起き上がってバスルームで身支度を整え、出てきてから二日酔い薬を飲み、携帯を手に取って部屋を出た。
食欲はあまりなかったが、染野早紀が用意してくれた愛情たっぷりの朝食を、親友の気持ちを無駄にするわけにはいかなかった。
園田円香は軽く温め直し、椅子に座って、朝食を食べながら携帯を見た。
まずWeiboを開くと、トレンドランキングの上位は相変わらず全て彼女に関するものだった。一位は、昨日彼女が高級車を運転している写真を記者たちが撮ったものだった。