園田円香は白い布を握りしめながら、ゆっくりとめくりながら、彼の名前を呼んだ。「江口……」
ベッドに横たわる人を見た瞬間、彼女は固まり、言葉が喉に詰まった。
ベッドに横たわっていた安藤秘書も、いつもは雄弁な彼が、しばらく言葉が出ないほど気まずそうな表情を浮かべていた。
二人はただ見つめ合い、無言で向かい合ったまま、空気には言い表せない雰囲気が漂っていた。
「ごほんごほん」結局、安藤秘書が我慢できずに最初に咳払いをして、この奇妙な沈黙を破った。
園田円香はまつ毛をパチパチとさせ、ゆっくりと我に返った。「あなた……安藤、安藤秘書、どうして、どうしてあなたなの?」
彼女が尋ねたのは江口侑樹のはずなのに。
「そ、そうなんです」安藤秘書は弱々しく答えた。「私、私は昨夜仕事を終えた後、もう遅かったし、病院に誰かいないといけないから、この病室で少し休んでいただけで、何か、問題でも?」
問題というほどの問題ではない。
おそらくあの看護師が、安藤秘書を彼女の家族だと勘違いして、隣の病室だと言ったのだろう。
でも……
「じゃあなぜ、寝るのに白い布を被るの?それに、私が人違いしてたのに、声をかけてくれなかったの?」
彼女は先ほど白い布越しに、涙と鼻水を垂らしながらあんなことを言って、全部見られて聞かれてしまって、本当に恥ずかしくて死にそうだった!
「……」安藤秘書は冤罪だと言わんばかりだった。「疲れすぎて、熟睡してしまって、たぶん寝ている間に無意識に自分で掛けたんでしょう。それにこれは白い布じゃなくて、ただのシーツですし……」
「それに、奥様がお入りになった時、私はまだ寝ていて、奥様が泣き出した時に目が覚めたんです。その後あんなことを仰っていたので、邪魔するのも気が引けて……こんな気まずい状況になるとは……」
園田円香は冷笑した。「今の状況の方が気まずくないとでも?」
「奥様が布をめくるとは思いませんでした。最後まで死んだふりを通すつもりだったんです」
「…………」
園田円香は目を閉じた。
もういい、恥をかいてしまったものは仕方がない。
この面子はもう取り戻せないのだから。
それにこれは重要なことじゃない、重要なのは江口侑樹のことだ!