江口侑樹は軽く眉を上げ、黒い瞳で彼女を見返し、躊躇なく口を開いた。「甘いね!」
「…………」
園田円香は夢を叶えるために手っ取り早い方法を使おうとは思ったことがなく、そんなことをする気もなかったが、夫である江口侑樹があまりにも早く、あまりにもはっきりと断ったことに、少なからず心が傷ついた。
他人の夫は、どんなことがあっても妻のために全てを解決してくれるものじゃないの?
江口侑樹は彼女の心の中を見透かしたように、軽く笑って、ゆっくりと言った。「江川夫人として私が便宜を図れば、その後のあなたの輝きは全て江川夫人としてのものになり、園田円香個人のものではなくなる」
園田円香はもちろんその理屈は分かっていたが、理性では理解していても、感情的には少し不満が残っていた。
「では江川社長はどのようなご意見をお持ちですか?」
江口侑樹は彼女の少し膨らんだ頬を見て、薄い唇を上げた。「その裏口は使わせないが、別の裏口なら開けてあげられる」
別の裏口?
園田円香は眉をひそめて考え込んだが、すぐに理解した。
履歴書が魅力的でないということだったが、江口侑樹の言う裏口とは、彼が指導してくれるということ?
そうだ、どうして忘れていたんだろう。江川グループの社長、ビジネス界の巨匠である江口侑樹が、目の前にいるじゃない!
彼はたくさんのエリート人材の履歴書を見て、多くの才能あふれる人々を面接してきた。彼が指導してくれれば、彼女の履歴書は確実に質的な飛躍を遂げるはず!
園田円香の心の中のちょっとした不快感は、たちまち消え去った。彼女は即座にノートパソコンを抱えてベッドの側まで飛んでいき、謙虚に学ぶ表情を浮かべて、柔らかく言った。「江川社長、ご指導いただけませんか」
「ふん」
江口侑樹はベッドの頭部に怠そうにもたれかかり、傲慢そうに顎を上げて意地を張り始めた。「何て言ったの?声が小さくて聞こえなかった」
園田円香は柔軟に対応し、さらに近づいて、はっきりとした口調で言った。「江川社長、私の書いた履歴書を見ていただいて、アドバイスをいただけませんか!」
「ん?何て呼んだ?」
園田円香は素直に言い直した。「だーりん~」
甘くて柔らかい声に、江口侑樹の喉仏が上下に動いた。
次に開いた声は、少しかすれていた。「他には?」
男というのは本当に調子に乗る犬っころね!