第201章 彼は嘘をついた

田中は頷いて言った。「安藤吉実が戻ってきてから、確かに奥様とよく接触していました。それに...密かに旦那様とも会っていたようです」

「......」

江川おばあさんはすでにそれを予想していたものの、実際に聞くと更に頭が痛くなった。

「私の油断でした。これまで彼女は大人しく海外にいたので気にも留めていませんでしたが、まさか帰国して、侑樹と円香の周りに堂々と現れるなんて」

江川おばあさんは冷ややかに鼻を鳴らしながら続けた。「本当に分かっていない。あの時海外に送り出して、裕福な生活を与えたのに、まだ諦めきれないなんて。私も甘く見すぎていたようね」

海外に送り出して......

園田円香の黒い瞳孔が僅かに縮み、呼吸が少し荒くなった。

つまり安藤吉実が突然海外に行ったのは、他の理由ではなく、江川おばあさんが送り出したということ......

江川おばあさんの言葉の意味からすると、海外で裕福な生活を送れるという条件で彼女を国外に追いやり、二度と戻ってこさせないよう、江口侑樹に近づかせないようにしたということだ。

しかし今、安藤吉実は自分で戻ってきて、しかも江口侑樹と密会までしている。

理由もなく江川おばあさんがそんなことをするはずがない。きっと...江口侑樹と安藤吉実は幼なじみで育ち、本当に互いに想いが芽生えて、一緒になりたかったのだろう。でも江川おばあさんは安藤吉実が気に入らず、意地悪な役回りを演じて、二人を引き裂いたのだ。

そして安藤吉実は霧島に行ってから帰国したということは、もしかしたら私の推測は間違っていなかったのかもしれない。江口侑樹と安藤吉実は霧島で会って、昔の恋が再燃し、それで安藤吉実は全てを顧みず帰国して、江口侑樹との縁を取り戻そうとしているのだ!

園田円香は唇を強く噛みしめ、顔が青ざめていった。

こんな推測をしたくはなかったが、事実は...どうやらそういう方向に進んでいるようだった。

「誰かいるの?」

突然、田中の声が耳に入った。

園田円香は驚いて我に返り、江川おばあさんと田中に会話を聞いていたことを知られたくなかったので、急いで身を翻し、そっと立ち去った。

田中はドアまで来て外を見たが、誰もいなかったので部屋に戻った。