田中は長年江川おばあさんの世話をし、付き添ってきたため、自然と彼女のことを一番に考えていた。園田円香の言葉を聞いて、なるほどと思った。
多くの場合、医者は患者の身体的な病気を治療できるが、心の病は自分で解決しなければならない。
安藤吉実というあの悪い女のことは言いたくなかったが、江川おばあさんの病状に役立つのであれば、話してもいいと思った。
ただ、田中は眉をひそめて、「どこから話せばいいのかしら…」
田中が話す気になったのを見て、園田円香は更に話を進めた。「安藤吉実さんは…江口侑樹さんと一緒に育ったと聞きました。以前は、おばあさまも彼女のことを可愛がっていたのに、どうして…今のような関係になってしまったんですか?」
話題を導くと、田中は自然に答えた。「安藤吉実さんは確かに若旦那と一緒に育ちました。旧邸の隣の別荘に住んでいて、おばあさまは彼女が一人で国内に住んでいて寂しいだろうと思って、とても良くしてあげていました。」
安藤吉実が以前住んでいた別荘に住んでいることは、染野早紀がすでに調べて教えてくれていたが、園田円香は安藤吉実があんなに大きな別荘で一人で育ったことに驚いた。
彼女は思わず尋ねた。「安藤吉実さんは、そんな小さい頃から一人暮らしだったんですか?」
田中は答えた。「彼女の側には年配の使用人が付き添っていて、その人が後見人でもありました。両親のことについては、私にはわかりません。」
なるほど。
園田円香は安藤吉実の身の上や背景には興味がなかったので、それ以上は聞かずに話題を戻した。「それで?その後何があったんですか?」
田中は昔を思い出しながら、嫌悪感を露わにして言った。「実は特に話すことはないんです。おばあさまは安藤吉実さんにずっと良くしていて、さらに…養孫娘にしようとまで言い出したんです。でも安藤吉実という人は、恩を仇で返す白眼狼で、恩知らずで裏切り者で、本当におばあさまの親切が無駄になってしまいました。」
養孫娘にしようとした…
この件は、安藤吉実の話と一致した。
園田円香はハンドルを握る手に少し力が入った。
彼女は突然口を開いた。「安藤吉実さんは江口侑樹さんを救うために、重傷を負って、永遠に妊娠できなくなったんですよね?」
突然の質問に、田中は思わず「はい」と答えてしまった。