電話が長く鳴り続け、切れそうになった時にようやく相手が出た。向こうの声は驚きに満ちていた。「円香?」
「うん、私よ」園田円香は微笑んで言った。「佐藤先生、お元気ですか?」
佐藤先生が去ってから、園田円香が初めて彼に電話をかけたため、佐藤先生は着信表示を見て、自分の目を疑ったほどだった。
今、その懐かしい声を聞いて、彼も思わず微笑んだ。「元気だよ。君は?」
何か用事がなければ、もう二度と連絡を取り合うことはないだろうと思っていた。
彼は驚きと同時に、嬉しくもあった。
「私は...」園田円香は言いかけて止め、結局別の言葉に変えた。「佐藤先生、以前おっしゃった言葉、まだ有効ですか?」
佐藤先生の唇の笑みが少し引き締まった。
どうやら、彼女に何か問題が起きたようだ。
彼は以前、去る時に園田円香に約束していた。「もし何か困ったことがあったら、いつでも私に相談してください」と。
そして彼は知っていた。園田円香の性格上、できるだけ人に迷惑をかけたくないタイプだということを。彼女が今このように口を開くということは、事態が深刻だということを意味している。
佐藤先生は考えるまでもなく答えた。「もちろんだよ。私の言葉は、永遠に有効だ」
少し間を置いて、彼は推測した。「真澄のことかい?」
園田円香が人に助けを求めるような事態は、指折り数えるほどしかない。
「はい」
園田円香はさくらテレビには入らず、隣のコンビニに行き、外のベンチに座った。彼女は通りの往来を見つめながら、小さな声で話した。
佐藤先生は「私の知る限り、真澄の状態は安定しているはずだけど。何か急な変化でもあったのかい?」
「いいえ、真澄に異常はありません。ただ、まだ意識が戻らないんです」園田円香は軽く息を吸って「以前、先生が提案してくださった、海外の病院に転院して、先生に直接治療と看護をしていただくという件について、今なら、まだ間に合いますか?」
この言葉は、佐藤先生を驚かせた。