第273章 生育能力を回復できる

ジェームズ博士は無意識に足を止め、振り返った。

先ほどのレストランマネージャーが急いで近づき、彼の前まで来ると、彼が持っていた袋を差し出して言った。「博士、これは安藤さんからの指示で、必ずお渡しするようにと。彼女は、どうぞお受け取りくださいと申しておりました。」

ジェームズ博士は目を伏せ、その袋を見つめた。

明らかに、中身は先ほどの高級ワインだった。

彼と言葉を交わすことはできず、しかも断られたにもかかわらず、彼女はワインを届けさせた……

ジェームズ博士の瞳に興味深そうな色が浮かんだ。

そして、彼は目配せで琳に指示し、琳は理解して手を伸ばし、その袋を受け取った。

ジェームズ博士と琳の姿が見えなくなってから、レストランマネージャーは安藤吉実が残した電話番号に連絡した。

翌朝8時、安藤吉実は再びホテルに足を踏み入れた。

彼女はまずフロントに行き、スタッフに琳の部屋に電話をかけてもらい、ジェームズ博士に、彼女がロビーで待っており、一度お会いしたいとお伝えくださいと頼んだ。

その後、安藤吉実は休憩エリアに向かい、ソファに座って待った。

9時、琳がジェームズ博士の部屋をノックし、入室後、安藤吉実の要望を伝えると、ジェームズ博士はほとんど考えることなく断った。「来客は受け付けない。帰るように伝えてください。」

「はい、博士。」

琳は階下に降り、安藤吉実の前まで来ると、冷淡だが丁寧に言った。「安藤さん、博士は本日大変お忙しく、来客をお断りしております。どうぞお帰りください。」

安藤吉実はこの返答に驚きもせず、表情を変えることもなく、むしろ笑顔で言った。「申し訳ありませんが、もう一度お伝えいただけますでしょうか。ジェームズ博士がお時間を作れるまで、ここでお待ちいたします。もしお考えが変わられましたら、ご連絡ください。」

彼女の頑固さを見て、琳もそれ以上何も言えず、礼儀正しく頷いて上階に戻った。

安藤吉実は言葉通り、本当に辛抱強くソファに座り続け、朝から夜まで待ち、夜中の12時になってようやく立ち去った。

3日目の朝8時、安藤吉実は同じようにホテルに来て、ソファに座って待った。

フロントからの電話を受けた琳は、二度も門前払いを食らってもなお、この安藤さんの粘り強さに感心せずにはいられなかった。