江口侑樹はその向こうで冷笑した。「園田円香、君の欲望は本当に大きいね」
甘い言葉を囁いていた時は、彼のお金を好きなように使わせてくれたのに、手のひらを返したら、彼女の欲望が大きすぎるという。
なんて皮肉なことだろう。
園田円香は反論した。「江口侑樹、あなたが値段を言えって言ったじゃない?どうしたの?財産の半分を要求したら惜しくなったの?クズ男を演じるのはそう簡単じゃないわよ。それに、私、園田円香はそう簡単にいじめられる女じゃないの!」
彼女は彼を愛していたから、多くの場合、妥協し、我慢することができた。
でも今となっては、彼女の愛は、ずっと間違った相手に向けられていたことが分かった。
だから、もう彼を愛するのはやめよう。
今は痛くても、全力を尽くして、この棘を抜かなければならない。
そう思いながら、彼女は再び嘲笑った。「あなたは私を騙し、隠し事をし、私を道具のように扱い、私の子供をあなたの恋愛の踏み台にしようとした。今、高慢な態度で私と条件を話し合う資格なんて、あなたにはないわ!」
染野早紀はこの言葉を聞いて、思わず拍手して喝采を送りたくなった。
彼女と秦野慶典の喧嘩は、いつも単純で乱暴で、手を出せるなら言葉は要らないタイプだった。
確かに、いつも彼女が一方的に秦野慶典を殴っていたが、秦野慶典はまるで犬のように皮が厚くて、彼女が手が腫れるほど殴っても、彼は平気な顔をしていた。
しかし彼女は人を罵るときに言葉に詰まってしまうので、今回の円香の鋭い言葉遣いに本当に感心した。
さすが将来の「論客」候補だ。
江口侑樹は数秒黙った後、口を開いた。「分かった。あげよう」
彼にとって、お金で解決できる問題は、問題ではなかった。
「株式の半分を、市場価格より高い価格で現金に換算してあげよう」
彼の潔さは、再び安藤秘書と染野早紀を驚かせた。
結局これはとてつもない額のお金なのだ...江口侑樹は本当にそれほど寛大なのか、それとも安藤吉実のために、惜しみなく財を投げ出すのか。
「ふん」
園田円香はまだ納得していなかった。「江口侑樹、耳が聞こえないの?私が欲しいのは株式よ、お金じゃない!」
江口侑樹の口調も不機嫌になった。「園田円香、調子に乗るな。株式なんて、君には手に入れられないものだ!」