第330章 正面から捕まる

ホテルの部屋の中。

園田円香はそのパスワードに強く衝撃を受けた。

この数字は、5年前、江口侑樹に公の場で婚約を破棄された日だった!

彼が自分に対して感情がないことは分かっていたが、まさかここまで憎んでいるとは思わなかった。金庫のパスワードまで、婚約破棄の日付を使うなんて。

以前のような心が締め付けられるような苦しさはもうないものの、胸の中は千匹の蟻に噛まれているような痛みがあった。

そのとき、Bluetoothイヤホンから染野早紀の焦った声が聞こえてきた。「円香、あの男を止められないわ。上がってきたわよ、早く逃げて!」

園田円香は急いで我に返った。

金庫の扉を開け、中をじっと見つめた。

ようやく...天は努力する者に味方してくれた。かつて自分が背負っていた小さなバッグが一目で見つかった。

時間を無駄にせず、すぐにそれを取り出して背負い、金庫を閉めて立ち上がり、外へ走り出した。

しかし、ドアの後ろまで来て開けようとした瞬間、外から足音が聞こえ、そしてドアの前で止まった。

彼女の動きが急に止まった!

まさに正面から行き止まりに......

今、彼女には二つの選択肢があった。一つは、メガネとマスクをつけ、清掃員の服を着ているので、清掃員のふりをして江口侑樹の視線を避け、なんとか逃げ切れないか試してみること。

もう一つは、まず隠れて、そして逃げるチャンスを待つこと!

彼女はわずか1秒の迷いの後、即座に二つ目を選び、急いで引き返した。

清掃員に化けるのはリスクが高すぎた。江口侑樹は洞察力が鋭く、彼女のことをよく知っているので、一目で見破られる可能性があった!

彼女が引き返した瞬間、ドアがピッと音を立てて開き、男が部屋に入ってきた。

時間がなく、園田円香は良い隠れ場所を探す余裕もなく、部屋を一瞥すると、すぐにクローゼットに向かって走り、ドアを閉めた。

ドアに寄りかかりながら、男が部屋に入ってきて、上着を脱ぎ、ネクタイを緩める音を聞いていた。

園田円香は呼吸を極力静かにし、自分の存在感を最小限に抑えた。

江口侑樹という男の警戒心が非常に強いことを知っていたので、少しも油断できなかった。

クローゼットは彼女にとって馴染みがあり、観察する必要もなかった。