第332章 極限の憎しみ

それは一本の黒くて細い髪の毛だった。

スマートフォンに伸ばしていた彼の手は向きを変え、長い指でその髪の毛を摘み上げ、眺めた。

この髪の長さは、自分のものではないはずだ。

一目見ただけで、女性のものだと分かった!

彼のスイートルームは毎日専属のハウスキーパーが掃除をしており、このハウスキーパーは彼の潔癖症を熟知していたため、毎回の掃除は非常に丁寧で入念に行われ、いつも隅々まで綺麗に、埃一つ残さないようにしていた。

髪の毛が落ちているなんて、彼女にとってはあり得ない出来事だった。

となると、誰か女性が密かにここに侵入したということだ。

彼は突然、先ほど階下で出会った染野早紀のことを思い出した。あんなに突然彼の前に現れ、あれこれと話しかけてきて、まるで彼を引き止めようとするような態度だった。

つまり、侵入してきた女性のために時間を稼ごうとしていたということか?

江口侑樹は口角を歪め、ベッドサイドテーブルの受話器を取り、内線を押した。

向こうが応答するとすぐに、彼は直接指示を出した。「今夜のホテルの監視カメラの映像を持ってきてくれ。」

アパートにて。

園田円香は少し不安な気持ちで、本物と偽物の離婚証明書を見比べた。

その結果……彼女の心は一気に奈落の底に突き落とされたかのように、瞬時に暗闇に飲み込まれた。

この離婚証明書は偽物で、無効なものだった!

つまり、彼女と江口侑樹は実際には離婚しておらず、今でも合法的な夫婦だったのだ!

彼女はしばらくこの事実を受け入れることができず、その場で呆然と立ち尽くした。

染野早紀も同様に驚いていた。

これは彼女にも理解できないことだった。

3年前の江口侑樹と園田円香の離婚について、彼女は全過程に関わっており、江口侑樹の冷酷さと無情さを目の当たりにしていた。

通常の論理では、この離婚が偽物であるはずがなかった。

しかし、この偽物の離婚証明書が確かに目の前にあり、離婚していないという事実を否定することはできなかった!

しばらくの沈黙の後、染野早紀が最初に口を開いた。「理解できないわ。江口侑樹のあの犬畜生、一体何を考えているのかしら!」