第391章 ダーリン、おやすみ～

園田円香の顔が、突然男の顔に近づいた。

二人の距離が一気に縮まり、息が絡み合うほどの近さになった。

園田円香は唇の端を上げ、甘く微笑んで、神秘的に言った。「デートを約束してくれたら、その日に答えを教えてあげる」

男女の駆け引きは、お互いの駆け引きがあってこそ王道なのだ。

彼女は餌を投げかけて、彼を釣る必要があった。

江口侑樹も唇の端を引き上げた。

彼は園田円香の考えていることが見透かせていた。以前なら、それを幼稚で退屈だと感じただろう。

多くの場合、他人の心を読むのは簡単で、彼らが何を考えているかが一目で分かってしまうため、つまらなく感じていた。

しかし園田円香は少し違っていた。

彼は知っていた。彼女の彼に対する感情は、彼の彼女に対する感情と同じで、お互いが永遠に消えてしまえばいいと思っていることを。

それなのに……彼女の行動は、いつも予想外だった。

彼は迷信を信じない人間で、挑戦も好きだった。

どうせ園田円香を潰すのは蟻を潰すように簡単なことだ。彼女がどんな芸当を見せてくれるか、見てみるのも悪くない。

江口侑樹は唇を開き、低く心地よい声で言った。「いいよ、デートしよう」

近すぎる距離と色っぽい声に、園田円香の心臓は半拍抜けて、鼻先が少し赤くなった。

江口侑樹はそれを見たようで、意味ありげに彼女を見つめた。

園田円香は恥ずかしそうに鼻を触り、急いで元の位置に座り直すと、心の中で自分を叱りつけた。

色仕掛けは成功せず、逆に相手のイケメン攻撃にほとんど魅了されそうになった。本当に失策だった。

でも、彼の顔があまりにも得をしているんだもの！

人は美しいものが好きなもの。彼女だって……人間なんだから仕方ない！

軽く咳払いをして、園田円香は落ち着きを取り戻した。「じゃあ約束ね。時間と場所は後で連絡するわ。私、上がるわね」

そう言って、園田円香は車のドアを開け、降りた。

ドアを閉めようとした時、彼女は少し身を屈め、かわいい顔を中に向けて、江口侑樹に甘く言った。「だーりん、おやすみ～」

その言葉を残すと、園田円香は恥ずかしそうに、きっぱりとドアを閉め、足早にマンションへと駆け込んだ。

江口侑樹は首を回し、窓越しにその細い影が視界から消えるのを見つめた。彼の端正な顔には相変わらず表情がなく、ただ「発車しろ」と言った。