087:威厳のある蒼井大婆様

須藤大婆様は長年豪門で暮らしてきたため、一目で蒼井真緒の本当の目的が須藤悠翔ではないことを見抜いた。

彼女は須藤悠翔を単なる踏み台として利用しているだけだった。

須藤大婆様がそのように蒼井真緒について言うのを聞いて、須藤悠翔は眉をひそめた。

真緒はこんなにも優しく、温厚で気立ての良い人なのに。

「おばあちゃん」須藤悠翔は須藤大婆様を見つめ、「人の見方を変えるのは難しいことは分かっています。でも、あまりにも断定的すぎませんか？真緒のことを知ってまだ数分でしょう？本当に彼女のことを理解していますか？彼女のことを完全に理解すれば、本当に素晴らしい女の子だと分かるはずです。」

須藤大婆様の蒼井真緒に対する誤解があまりにも深いことを知り、須藤悠翔は言いようのない苦しさを感じた。

須藤大婆様は須藤悠翔を一瞥し、「お前は本当に魔が差したようだな！足の指で考えても分かるはずだ、蒼井真緒は単純な女じゃない。」

「もし彼女が本当に良い子なら、華和の肝臓を切り取った後で、華和を田舎に十数年も放置することなんてしないはずだ。最後には華和を代理結婚の道具として差し出すなんて！」

「良い子がそんなことをするか？」

蒼井華和がいなければ、蒼井真緒に今日があったのか？

これは恩知らずと何が違うというのか？

また蒼井華和の話か。

須藤大婆様のこの説明を聞いて、須藤悠翔の目に嫌悪の色が浮かんだ。

彼の目には、須藤大婆様は時々確かに混乱しているように見えたが、ここまでひどくはなかったはずだ。

しかし今は。

彼女の目には蒼井華和というあの策略家しか見えていない。

蒼井華和の手口は巧妙で、須藤大婆様を完全に手玉に取っている。蒼井真緒は彼女の前では、ただの白紙同然だ。

須藤悠翔は我慢強く須藤大婆様に説明した。「まず第一に、蒼井華和は真緒の姉です。もし当時蒼井家が引き取っていなければ、孤児院で生き延びられたかどうかも分かりません。姉として、妹が助けを必要としているときに、肝臓を提供するのは当然のことじゃないですか？それに、肝臓は再生する臓器です。少し切り取られただけで、命を取られたわけじゃありません。姉妹の間で、今までそんなことを気にしているはずがないでしょう？」

結局のところ、蒼井華和は蒼井真緒を本当の妹として見ていなかったのだ。