紅音を見つけるって?
蒼井陽翔が本当に妹として思ってくれているなら、そんな言葉は言わないはず。
彼女と紅音。
一人は実の娘で、もう一人は養女。
もし紅音が本当に戻ってきたら、蒼井家に自分の居場所はあるのだろうか?
おそらくその時は、紅音の付き添いの下女になるしかないのだろう。
蒼井陽翔は気付かなかったが、蒼井紫苑の伏し目がちな瞳の奥に一瞬、冷たい光が走った。
それはドラマの中で悪役の女性にしか見られない眼差しだった。
しばらくして、蒼井陽翔は立ち上がって言った。「もう遅いから、紫苑、私は部屋に戻って休むよ」
「うん」蒼井紫苑は頷いた。「お兄様、おやすみなさい」
「おやすみ」そう言いながら、蒼井陽翔は何か思い出したように続けた。「そうだ紫苑、明後日海門市で撮影があるんだけど、一緒に来て遊ばない?」