実はそうではない。
そう考えると、蒼井陽翔は続けて付け加えた。「兄さん、人を善良に考えすぎないで。蒼井華和が良い人だと思わないでください」
言い終わると、蒼井陽翔は背を向けて立ち去った。
蒼井遥真は彼の後ろ姿を見つめ、心の中で呆れていた。
この一件で、肝心なことを忘れてしまった。
本来なら蒼井陽翔に蒼井紫苑と距離を置くように注意するつもりだった。
リビングにて。
蒼井大婆様は蒼井華和にフルーツを取ってあげた。
「華和、このカラムボラを食べてみて。とても甘いわよ」
蒼井華和はカラムボラを受け取り、一口食べた。
「美味しい?」蒼井大婆様が尋ねた。
「美味しいです」蒼井華和は頷いた。
蒼井大婆様はすぐに使用人にもっと洗って持ってくるように言いつけた。
蒼井紫苑は傍らに座り、目を細めた。
蒼井華和は本当に手練手管が巧みだわ。
蒼井大婆様をこんなに喜ばせるなんて、こんな蒼井大婆様を見たことがない。
でも考えてみれば当然のことね。
蒼井華和はただの田舎娘に過ぎないわ。
彼女はこれまで、高価なカラムボラなど食べたことがないはず。蒼井家のような名門に出会えたのだから、当然蒼井大婆様に丁寧に取り入るわ。
この莫大な富を断る人がいるはずがないもの。
蒼井大婆様が振り返って蒼井華和にフルーツを取ろうとした時、不意に蒼井紫苑の蛇のような視線と目が合い、すぐに不快な表情を浮かべた。
蒼井紫苑はいつもこう。
陰気臭く人を見つめて、上流階級の品格など微塵もない。
蒼井大婆様は蒼井華和にスイカを一切れ取ってあげながら、続けて言った。「華和、あなたと紫苑の仲はどう?」
「うーん、普通です」蒼井華和は正直に答えた。
蒼井大婆様に嘘をつきたくなかった。
「普通で当然よ」蒼井大婆様は蒼井華和の手を軽く叩き、声を低めて言った。「あなたは、彼女とは違う道を歩む人なのよ」
もし最初から蒼井修誠と篠崎澪が養子にしたのが蒼井華和だったら、きっと嫌いにはならなかっただろう。
蒼井大婆様はそれ以上何も言わず、続けて話した。「そうそう華和、河内市のどこに住んでいるの?住所を教えてちょうだい。今度おばあちゃんが遊びに行くわ。おばあちゃんは年は取っているけど、心は若いのよ。心の中では永遠に十八歳よ。その時は一緒に火鍋を食べて、タピオカミルクティーを飲みましょう!」