実はそうではない。
そう考えると、蒼井陽翔は続けて付け加えた。「兄さん、人を善良に考えすぎないで。蒼井華和が良い人だと思わないでください」
言い終わると、蒼井陽翔は背を向けて立ち去った。
蒼井遥真は彼の後ろ姿を見つめ、心の中で呆れていた。
この一件で、肝心なことを忘れてしまった。
本来なら蒼井陽翔に蒼井紫苑と距離を置くように注意するつもりだった。
リビングにて。
蒼井大婆様は蒼井華和にフルーツを取ってあげた。
「華和、このカラムボラを食べてみて。とても甘いわよ」
蒼井華和はカラムボラを受け取り、一口食べた。
「美味しい?」蒼井大婆様が尋ねた。
「美味しいです」蒼井華和は頷いた。
蒼井大婆様はすぐに使用人にもっと洗って持ってくるように言いつけた。
蒼井紫苑は傍らに座り、目を細めた。