これは如月廷真が二度目に聞いた言葉だった。
不思議な感覚で、心のどこかが一瞬で満たされた。
この瞬間、目の前の人が星を欲しいと言えば、なんとかして手に入れようとするだろう。
如月廷真は蒼井華和の側に歩み寄り、「この方は?」と尋ねた。
「蒼井兄さんよ」と言って、蒼井華和は続けた。「蒼井兄さん、こちらは私の婚約者の如月廷真です」
婚約者。
その呼び方を聞いて、蒼井琥翔は一瞬固まった。
蒼井華和にすでに婚約者がいるとは思いもよらなかった。
如月廷真は横目で蒼井華和を見た。
やはり、彼の女の子は決して彼を失望させることはない。
一瞬の戸惑いの後、蒼井琥翔はすぐに自己紹介をし、如月廷真に手を差し出した。「如月さん、はじめまして。蒼井琥翔です」
「蒼井先生」如月廷真は蒼井琥翔と握手を交わした。
そう言って、如月廷真は続けた。「華和、蒼井先生とどこへ行くの?送っていくよ」
「ありがとう、病院に行くの」
「乗って」如月廷真はまず蒼井琥翔のために助手席のドアを開けた。
蒼井琥翔は身を屈めて車に乗り込んだ。「ありがとう」
如月廷真と蒼井華和は後部座席に座った。
車内の若松峰也は少し困惑していた。
どうして突然、みんな乗り込んできたのだろう?
それに、隣に座っているこの人は如月廷真のライバルなのか?
こっそり意地悪をしたほうがいいのだろうか?
そのとき、如月廷真が口を開いた。「病院へ」
若松峰也は特に何も言わず、ただ「はい」と答えた。
30分後、車は病院に到着した。
若松峰也は車内で待機し、如月廷真は蒼井華和と一緒に病院へ向かった。
誰かの体調が悪いのかと思っていたが、法医学物証科に着くまで、二人がDNA鑑定を受けに来たことを理解していなかった。
蒼井琥翔は30歳前後に見え、父親である可能性は除外され、おそらく蒼井華和の兄である可能性が高かった。
蒼井琥翔が将来の義兄になる可能性が高いと気づき、如月廷真は警戒心を半分解いた。
義兄を怒らせるわけにはいかない。
DNA鑑定の手順は多かった。
第一段階はDNAの抽出。
看護師は二人を採血に連れて行った。
蒼井琥翔の方はすぐに採血が終わった。
蒼井華和の方は、看護師が長い間血管を探したが、なかなか見つからなかった。