蒼井大婆様の最大の願いは家族全員が揃うことだった。
この数年間、彼らは一度も家族写真を撮ったことがなかった。
家族写真を一枚撮ることは蒼井大婆様の執念となっていた。
そう思うと、篠崎澪の心はより一層苦しくなった。
蒼井大婆様は一生南北を転戦し、多くの苦労を重ねてきた。やっと戦いから解放されたというのに、唯一の孫娘を失ってしまい......
その言葉を聞いて、蒼井紫苑は唇を噛んだ。
死ね!
この老婆、早く死んでしまえ!
蒼井紅音に会えると思っているの?
来世にでもね。
「お母さん、おばあちゃんは必ず無事に姉さんの帰りを見られるわ。悲しまないで」蒼井紫苑は篠崎澪を抱きしめた。
篠崎澪は蒼井紫苑の肩に顔を埋め、声を上げて泣いた。
もし蒼井大婆様に何かあったら、自分はどうすればいいのか想像もできなかった。
「もう泣かないで、お母さん。私たちはおばあちゃんを信じましょう......」最後には蒼井紫苑も涙声になり、とても悲しそうだった。
蒼井陽翔は蒼井紫苑を見つめ、胸が万感の思いで一杯になった。
こんな時に蒼井大婆様を一番心配しているのは蒼井紫苑だった。
蒼井大婆様が心から慕っている実の孫娘は?
きっとベッドでぐっすり眠っているに違いない!
蒼井大婆様にこの光景を見せるべきだ。誰が本当に彼女を心配し、大切に思っているのかを知らせるべきだ。
深夜だというのに、病院の近くでは救急車のサイレンが鳴り続けていた。
救急室の前を通り過ぎる人々は、この家族の容姿の美しさに驚かされた。
特に蒼井琥翔と蒼井遥真は目を引いた。
蒼井遥真は長年ビジネスの世界にいたため、一般人にはない実業界エリートの雰囲気を纏っており、まるでアニメから飛び出してきた社長のようだった。
蒼井遥真と比べると、蒼井琥翔は篠崎澪に似た容貌で、情感溢れる桃花眼を持ち、誰に対しても春風のような優しさで接し、思わず悲鳴を上げたくなるような魅力があった。
蒼井陽翔は眼鏡とマスクをしていたが、トップスターとしてのオーラは隠しきれなかった。
篠崎澪は年を重ねていたが、眉目に艶やかさが残っており、まさに歳月は美人に優しいという言葉通りだった。
五人の中で、蒼井紫苑だけが少し見劣りしたが、一般人の中では際立つ存在だった。